経年劣化通常損耗が大家さん負担になっているか確認する
私は不動産業者として、たくさんの賃貸物件の退室立会に関わってきました。
その経験をもっていても「退室時に敷金がいくら返ってきますか?」と質問を頂いた場合には「分かりません」という回答が一番正確な答えとなります。
その理由は退室時の状況は私が判断するのではなく大家さん等が判断するからです。例えば「私の感覚では、退室の際に一円の請求も受けないと判断」をしても、同じように大家さんもそう思うとは限らないためです。
このサイトでは、私自身が賃貸物件の退室立ち合いをする場合、どのようなことに気を付けるか記載をします。私ならこうするという不動産業者としての内容を記載しますので、是非最後までお読み頂ければと存じます。
目次
1.経年劣化通常損耗が大家さん負担になっているか確認する
2.請求を透けた場合には特約の有効性と請求内容を考える
1.経年劣化通常損耗が大家さん負担になっているか確認する
退室立会の前に確認をする一番重要なことは賃貸物件の「明渡し時」に「どのような負担」を約束しているか契約内容を確認することです。
その内容が記されている「住宅賃貸借契約書」には難しい言葉で表現されていると思いますが、損をしたくないなら、ここは読まなければなりません。
読む場所は「契約期間中の修繕」「明渡し時の原状回復」及び「特約等」です。
一例ですが、国土交通省の『賃貸住宅標準契約書』では下記のように記載されています【※甲=賃貸人 乙=賃借人】。
(契約期間中の修繕)
国土交通省 賃貸住宅標準契約書
第9条 甲は、乙が本物件を使用するために必要な修繕を行わなければならない。この場合の修繕に要する費用については、乙の責めに帰すべき事由により必要となったものは乙が負担し、その他のものは甲が負担するものとする。
(明渡し時の原状回復)
国土交通省 賃貸住宅標準契約書
第 15 条 乙は、通常の使用に伴い生じた本物件の損耗及び本物件の経年変化を除き、本物件を原状回復しなければならない。ただし、乙の責めに帰することができない事由により生じたものについては、原状回復を要しない。
難しい言い回しですが「乙の責めに帰すべき事由により必要となったものは乙が負担」「乙は、通常の使用に伴い生じた本物件の損耗及び本物件の経年変化を除き、本物件を原状回復」と記載されています。
これは入居者が壊したものでなければ負担をしなくて良いという意味です。この場合「退室時に、ここを壊した」と大手さん等から指摘を受けなれば、退室時にお金の請求を受けることなく退去することができます。大家さんに敷金を預けていれば、当然に全額の返金をして頂けることになります。
もし、退室立会の際、大家さん等から入居者の故意過失で物件が壊れているという理由で金銭の請求を受け、そのことに納得ができなければ国土交通省のガイドラインを確認されることをお勧めします。
このガイドラインを読んで請求内容が適切と判断した場合には、納得できなくても支払われることを推奨します。それは請求されても仕方がない項目だからです。
トラブルになりやすい修理箇所としては「フローリングの擦り傷」「掃除を怠ったことになるカビ」「台所のコゲ跡」等やうっかりしがちなものは「重いものを掛けたことによるカーテンレール等の歪み」「100円均一等の突っ張り棒を使用したことによる壁の凹み」等色々なことがあります。
一例ですが、Rooch(ルーチ)というサイトで詳しく纏められていますので、是非ご参考頂ければと存じます。
尚、通常損耗経年劣化が大家さん負担になっておらず、これらが入居者負担になっている賃貸契約も有効です。
この場合、契約内容の通り故意過失で賃貸物件を壊していなくても大家さんから修理費用の請求を受ける可能性は高いです。
契約通りであれば請求されるのは仕方のないことなのです。但し、当然なから、それに納得ができず、交渉をされる方もいれば争う方もいます。この内容を裁判所に持っていった場合、その請求が認められない可能性もあるため、訴える方もいます。
賃貸物件で退室時の原状回復のトラブルは多く、このようなことは珍しくないと思うのは本音となります。
2.請求を透けた場合には特約の有効性と請求内容を考える
契約書に特約がある若しくは故意過失による汚損破損がある等の様々な理由で退室時に大家さんから修理費用の請求受けることがあります。
まず、理不尽な内容で請求を受けていないか判断することが大事です。一番の資料はやはり国土交通省のガイドラインとなります。
これと契約書の「特約等」の内容を考え、請求は妥当なのか判断が可能だと思います。
但し、場合によって特約そのものが有効ではない可能性があります。これは「三井住友トラスト不動産のサイトに原状回復費用を借主に負担させる特約」について詳しく記載されていますが、不動産業者が作成している賃貸借契約書の特約は甘いことがあるのは事実です。
私がこの内容を記載している理由は、争い事をあおっている訳ではなく、どうしても納得できない請求を受けている場合には、その対抗手段になるという理由からです。
私的には、特約の方法が甘いというだけで、その内容が適正であれば、そのまま支払うことをお勧めします。けして、これを争点にして争うことを推奨している訳でないことを重ねて申し上げます。
尚、退室立会で請求を受ける請求内容は日常では見慣れないことが多いと思います。そのため請求金額が適正なのか判断することは難しいことも多いです。
一例ですがルームクリーニング費用として40,000円を請求された場合、それが高いのか判断が付かない方も多いのではないかと思います。
大体の金額であればインターネット検索で調べることはできます。例えばリショップナビに参考例はあります。
しかし、この方法で適正金額が調べられるかというと、そうではないと思われます。理由としてはリフォーム業者は、本当にピンキリであり、本当に素人同然の業者もいるからです。
私は、そういう業者に頼んだ結果、汚れが落ちていないために別の業者に手直しを頼んだ経験があることから、私的にはリフォーム業者に依頼をする場合の基準は「値段で判断」ではなく「技術で判断」しています。
どこの業者も大差はないという前提であれば、それでも良いと思いますが、私はそうでもないことを体験しているので、安いだけの業者に任せる勇気はありません。
そのため、請求額だけを比べて、その請求額が適切なのか一概に判断ができないと思います。
インターネット検索をたくさん行えば、ある程度判断ができると思いますが、安いものだけ並べると失敗する可能性もあるということです。
そのため、大家さんから受けた「請求額」が高いと感じたため、減額して欲しい場合には、現実的な手段として「負担割合」を交渉されることをお勧めします。
当然ながら物件を修理するためには、お金が掛かります。その修理費用の大家さんの負担割合を増やして貰うように交渉するのです。
正直、争い事になることを覚悟して退去した元入居者に原状回復の請求をする大家さんは少ないです。
当然ながらお部屋を直さないと次の入居者に貸すことができないことが多いため、交渉を程々にして次の入居者の募集した方が、大家さんは結果的に得をすることが多いように思います。そういうことを分かっている可能性もあるということです。
この方法は短期間の入居でお部屋を汚した等の場合には難しい場合もありますが、長期住んでいた場合には有効になることも多いため、状況によって活用されることをお勧めします。
まとめとして原状回復の請求を受けた場合には「契約内容を理解した上で、適正な請求を受けているのか」判断することが重要となります。これは当たり前なことではありますが、退去立会を人生で経験することが少ない方が多いため、判断ミスをすることも珍しくないと思います。
理不尽な請求項目がないか確認するだけでも良いと思います。契約書の特約等と国土交通省のガイドラインで、この部分だけは判断できますので、最低限この部分だけは見ることをお勧めします。
最後までお読み頂きありがとうございました。このサイトが何かの参考になれば幸いです。
サイトのまとめ
1.経年劣化通常損耗が大家さん負担になっているか確認する
2.請求を透けた場合には特約の有効性と請求内容を考える