物件に原状回復が必要な理由、それをしない家主の問題点
「今まで借主の退去後に原状回復工事なんてしたことがない。今回も修理をしないでそのまま貸してほしい」
大家さんから、このように言われて驚いたことがあります。
退室後の賃貸物件で、大家さんと次の入居者を探すための募集条件を確認しているときのことでした。 私は不動産業者として、 大家さんから次のようなご主張を伺いました。
「長年賃貸経営をしているが今まで原状回復工事をしなくても問題なんて起きたことがない」
この大家さんは十数年賃貸経営をしていて、数棟の物件を所有しています。
それだけの物件を今まで一切の修理をしたことがないということなのだろうか?
尋ねてみるとそれを肯定されました。これは今までこの大家さんは非常に運が良かったのだと思います。
このサイトでは、この事例の際に私が考え、対応したことについて記載します。
何かの参考として頂ければ幸いです。
目次
1.退室後に賃貸人が原状回復工事をしない場合の問題点
2.事例の際の私の対応
1.退室後に賃貸人が原状回復工事をしない場合の問題点
賃貸人物件で大家さんが原状回復工事を一切しないで次の入居者の募集をする場合、不動産業者が必ずしなければならないことは、広告等でその事実を告知することです。
その事実を知っていたら契約をしなかったと賃借人が思うようなことを不動産業者は故意に隠してはいけません。
今回の場合その可能性が十分にあると考えますので、入居者募集の広告や賃貸借契約をする際、必ず説明をして、それを理解頂いた方に借りて頂くようにします。
この物件の場合には心理的瑕疵があるとは言いませんが、手続きとしてはこれと同様に告知をします。不動産業者が関わる場合、これを故意に隠して取引しないようにすることをお勧めします。
また、原状回復工事をしていない物件を貸すのですから、基本的には次の入居者も原状回復工事はしないことを前提とするべきです。
この工事を特約で義務とするのならば話しは別ですが、修理していないものを貸した場合、修理されないで返ってくると考えるべきです。
特約等で次の入居者に原状回復工事を義務とする場合、基本的にはその前の入居者から原状回復工事をしていない期間を通算して賃貸人と入居者の負担は配分するべきだと思います。
また、入居者が原状回復工事を負担した場合には必ず修理をします。当たり前ですが受け取ったにも拘わらず、今まで問題がなかったという理由で修理をしないことには問題があります。
2.事例の際の私の対応
基本的に原状回復していないものを貸すため、私は大家さんに、これは広告等で告知をしなければならない内容であることを説明してから、次の三点の提案しました。
- 故意過失で部屋を壊した場合以外の原状回復費用は0円という広告をする。
- 敷金は無料とする。
- 相場より若干低い家賃で広告をする。
提案の際、私は原状回復をしていないことをプラスと考えました。
本来であれば大家さんは賃貸物件に修理という先行投資をして、それを家賃等で回収することを考えます。今回は先行投資をしていないため、その分、安く市場に供給すれば需要があるのではないかと考えました。
しかし、この提案に大家さんは難色を示しました。
理由としては相場の家賃で募集をしてほしいとのご要望をお持ちでした。
その気持ちが先行していたからか分かりませんが、相場以下の家賃の提案をしたことだけではなく、原状回復をしていない事実は告知をしなければならないという説明についても当初は理解を頂けませんでした。
正直な話、募集物件の家賃を下げて頂けないことだけなら、何の問題はないのです。
それで部屋が決まらない場合、大家さんが経済的に困るだけですから。
但し、告知事項を告知させて頂けないのであれば、これは入居者にご迷惑が掛かる可能性があることですから、この物件の取引する訳にはいきません。
そのため、この取引がなくなる覚悟で大家さんに説明をさせて頂きました。
説明をして感じたことは、この大家さんは単純に無知であったのだと思います。
今まで何人の不動産業者がこの大家さんに関わったか分かりませんが、大家さんはこの手の話を教わったことがなかっただけなのです。
最終的に、この大家さんからは原状回復後に相場の家賃で入居者募集をすることに合意を頂きました。基本的に、この大家さんは家賃が下がることだけを気にしていたのだと思います。
まとめ
今まで様々な大家さんに出会ったことがあります。
- 入居の際、賃借人負担と主張をしても賃貸物件の鍵交換をしたがらない。
- 滞納があっても家賃の催促をしない。一年分くらい溜まったら不動産業者から入居者に電話をするように要求をし、請求の際には大家さんの名前は一切出さないことを要求する。
- 等…
基本的に不動産業者より大家さんの方が立場は強いです。これは物件を提供して頂いているのだから当然です。
そのため、不動産業者は大家さんの我侭に振り回されることは普通にあります。
大家さんが頑固である場合、ろくに説明をせず、不動産業者が器用に立ち回った結果、問題が問題にならなかったということが普通にあることを知っています。
この大家さんは、今までそのような不動産業者と付き合っていたのではないかと思います。
何かの参考となれば幸いです。最後までご覧頂きありがとうございました。
サイトのまとめ
1.退室後に賃貸人が原状回復工事をしない場合の問題点
2.事例の際の私の対応