2020年民法改正後も賃貸借契約の連帯保証人の責任は大差なし!?
このサイトでは住宅賃貸借契約の連帯保証人の責任は、2020年4月1日に民法が改正された後も大して軽くならず重いままという内容を記載します。
その理由として、保証人の民法改正で責任が軽くなった部分もありますが、実務上は大差がないと思えるからです。
民法改正後、賃貸借契約の保証人には極度額が定められます。
この極度額というのは、保証の限度額であり、保証人としてこの額まで保証をする責任があるという意味です。
上限ができたため、連帯保証人の責任は軽くなったと考える方はいると思います。
しかし、実務の整理するにつれ、連帯保証人の責任は民法改正後も大差がないという結論に至りました。
このサイトでは、まず連帯保証人と極度額の説明をしたあとに、私が考えた改正前と変わらない理由を記載いたします。
何かの参考にして頂ければ幸いです。
目次
1.賃貸借契約の連帯保証人とは
2.保証の極度額とは
3.賃料が未納になった場合、連帯保証人対する実務の流れ
1.賃貸借契約の連帯保証人とは
連帯保証人とは簡単に言うと債務者と同等の責任を負う保証人のことです。
賃貸借契約の場合、毎月掛かる賃料等を連帯保証人は保証をします。
少し検索をすると連帯保証人についての解説はたくさん出てきます。
連帯保証人であれば、主債務者とほぼ同等の地位となるため、主債務者がどのような状況であっても、債権者は連帯保証人にいきなり支払いを求めることが可能になる。一般に、貸金での保証人となることは自分が借りたことと同等であるといわれるのはこのためである。
引用元 保証人 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
民法改正の協議の際、一時は個人の保証人という制度は止めるべきではないかと話し合いがされたそうです。
責任が重いことがその理由です。
一度保証人になると「予期せぬときに」「予期もできない多額」の請求がされる可能性があります。
最終的に、この制度は残りましたが、個人の方が保証人の場合には極度額を設け、思いもよらないような多額の請求をされないように保護がされることになりました。
2.保証の極度額とは
極度額とは保証人が支払いの責任を追う限度額です。
個人(会社などの法人は含まれません)が保証人になる根保証契約については,保証人が支 払の責任を負う金額の上限となる「極度額」を定めなければ,保証契約は無効となります。こ の極度額は書面等により当事者間の合意で定める必要があります。極度額は,「○○円」などと明瞭に定めなければなりません。
引用元 保証に関する民法のルールが大きく変わります 法務局
2020年の民法改正後は個人が連帯保証人になる場合、極度額を決めなければ保証契約が無効となります。 【 一応、極度額を定めても無効となるイレギュラーなケースはありますので、このサイトの一番下に記載しておきます】
これにより保証人は「予期もできない多額」な保証をすることはなくなり、「極度額を限度とする額」までを保証すれば大丈夫という状況になりました。
尚、賃貸借契約の保証人になった場合には、「予期せぬときに」賃借人の連帯保証をする可能性は残されることになりました。
これは貸金等債務であれば連帯保証人の責任は原則3年(最長5年)という取り決めですが、賃料の連帯保証であれば極度額まで決めておればとりあえず問題ないだろうとの判断のようです。
また、賃貸借契約で連帯保証人の期限は原則3年等を定めた場合、3年後に賃貸借契約が続いている場合でも連帯保証人がいなくなるという問題が発生するためです。参考資料 保証に関する見直し 法務局
平成16年の話ですが、貸金等債務の保証人を保護するために民法は改正されています。そのときの保護の内容を貸金等債務以外の保証人にも拡大させることを目的としていましたが、賃貸借契約の場合には極度額を定めるのみとなりました。
極度額は保証人が保証する上限です。
例えば100万円を極度額とする保証契約をして、契約半ばで保証人が50万円を保証した場合、極度額は50万円になります。
今までであれば連帯保証人は賃借人の債務を青天井で保証をしなければなりませんでしたが、民法改正後は、保証人が支払った分は極度額が減額されます。
極度額まで保証をした場合、以後は賃貸人から保証を請求されても拒否をすることができます。
ただし、極度額まで連帯保証人が支払ったことは連帯保証人自身が証明しなければなりません。
何しらの理由で保証人として債務を支払った場合、契約が解約される等の元本が確定するまでは「連帯保証人への請求書」「賃貸人への振込控え」「領収証」などの証拠は保管しておいたほうが良いでしょう。
尚、賃貸借契約を結んで毎月賃借人が賃料を支払わずに連帯保証人が家賃を支払っている場合、賃借人と連帯保証人の関係によっては保証しているのではなく、仕送りをしていると判断されることもあります。
この場合には極度額が本当に減っていると考えられるのか見極めが必要となります。
3.賃料が未納であった場合、連帯保証人に対する実務の流れ
賃借人が家賃を滞納した場合、賃貸人は賃借人と連帯保証人へ請求をします。
これは民法が改正された後も同様です。
実務上、滞納の請求はある程度の節度はありますが、電話、通知、訪問等で賃借人と同様に連帯保証人にも行われます。
賃借人が賃料を1カ月でも支払わなかった場合、賃貸人は連帯保証人へ極度額に達するまでは賃借人と同様に請求することができます。
連帯保証人が極度額まで保証をすれば、それ以上は保証する必要はなくなりますが、それに達するまでは当然に滞納家賃がある度、請求されます。
ここからは個人的な意見で恐縮ですが、極度額まで賃借人が家賃を払わない状況は、そもそもが非常事態だと思います。イレギュラーなケースと考えて良いでしょう。
その状況であれば連帯保証人は極度額以上の請求をされないことで救われますが、多くのケースでは、その額を保証するまでに対処されると思われます。
保証人になった後、賃借人が無責任に家賃を払わなかった場合、保証人として賃借人に対し、節度ある対応や賠償を請求するのが普通だと思われます。
余程悪質な賃借人でなければ、大抵はこれで改善されると思います。
また、この対応に応じない賃借人の保証をするつもりの保証人は乏しいと思いますので、保証契約としては全く問題はないと思います。
そのため、実務上は民法改正後の個人の保証人は、思いもよらない高額な保証をする稀なケースは保護されますが、多くの場合は今までと同様に重い責任を負うと考えるべきだと思います。
尚、最近は家賃の保証会社があるため、家賃滞納があっても賃貸人には実質の痛手のないことは増えています。
そのため、連帯保証人に極度額が定まっても賃貸人は経営に影響は、殆どない考えられます。
家賃滞納に備えて賃貸借契約をする場合、賃貸人は必ず保証会社の契約をするべきと申し上げます。
まとめ
賃貸借契約の連帯保証人には極度額以上の保証はしなくても良くなりましたが、極度額以上の保証をすることが極まれだと思われるため、結局民法改正後も連帯保証人の責任としては大差がないのではないかと思われます。
そのため、もし保証契約をするのであればこれまで同様重い責任を背負うつもりで締結をするべきだと思われます。
尚、「2.保証の極度額とは」で下記で説明すると記載した例外について説明します。
法人が限度額を規定せずに保証契約を締結した後、その保証を個人が引き継いだ場合、限度額を定めてもその保証契約は無効となります。
法人が限度額を定めずに保証して債務ができた場合、それを個人が限度額を決めて保証をしても請け負うことは認められません。
そのため、このようなことが想定される場合には法人が保証契約をする場合でも限度額を定めた方が良いと思われます。
最後までご覧下さりありがとうございました。このサイトが何かの参考となれば幸いです。
サイトのまとめ
1.賃貸借契約の連帯保証人とは
2.保証の極度額とは
3.賃料が未納であった場合、連帯保証人に対する実務の流れ