定期借家契約が満了したのに借主が退去しません!? トラブル対応

目次
1.定期借家契約とは
2.非弁行為の禁止。
3.追い出すために借主を説得する。
4.借主の主張が納得できないので法的に淡々と進める。

定期借家契約の期間は、契約満了日をもって終了しますが、その日をもって入居者が物件を明け渡すことを確約している訳ではありません。

そのまま住み続けようとする方もいます。

私は大家さんに頼まれて、契約満期後も住み続ける方と会話したことがあります。私は、これで定期借家契約が切れているにも関わらず明け渡し請求が重労働となる可能性があると感じました。

とある古ぼけたアパートの一室に、その老人は一人で住んでいました。

ノックをして玄関ドアを開けると薄い白髪の老人が顔が薄汚れた土方の作業着姿で現れました。

私は、この老人には身寄がないことを知っています。私は、その老人に定期借家契約が満了したため、アパートを退去しなければならないことを説明しました。

そうすると老人は「行くところがないので、ずっとここに住まわせて下さい」と私に必死に頼んでました。どこにも行くところがないと主張をする老人に引くそぶりはありません。

この状況で老人にとって非常に困っている筈です。しかし、会話をしていると老人が時々、私に歯抜け顔の人懐っこい笑顔を見せます。

私は、この老人には身寄りがないことを知っています。追い出されて住む所がなくなるのは大問題だと思いますが、それより一人で暮らしで寂しいため、誰かが来てくれたことが嬉しいのかも知れないと私はその笑顔を見て感じました。

私は、この老人に、住んでいるアパートは近い将来取り壊す予定であること。そのために、この老人と賃貸人の賃貸借契約は普通賃貸借契約ではなく定期借家契約をしたことを説明しました。

その数日後、老人はアパートから退去しました。どこに行ったのかは分かりませんが、役所に相談していたことは知っていますので無事に暮らしているのであれば良いと思っています。

1.定期借家契約とは

定期借家契約は普通の賃貸借契約ではありません。理由は、更新のない契約のため、契約の満期後は居住を続けることができないからです。

そのため、賃貸人が一時的に物件を貸し出しする場合には、優れた賃貸借契約の方法ではあります。

しかし「入居者が明け渡すこと」について確約がされている訳ではありません。 法律上、一定期間で賃貸借契約が必ず切れるだけです。

例えば高齢者や病気等が原因で引越し先が中々見つからないような方が住んでいた場合、定期借家契約で締結したとしても実務上は、ただの追い出しと変わらないことがあります。

この場合、普通賃貸借契約と定期借家契約の違いは借主を強制的に退去頂くための「正当事由」が不要なだけです。

定期借家契約で締結していても満期後に退去したいくないと借主が主張した場合、次に行うこととしては、

  • 追い出すために借主を説得する。
  • 費用が掛かるのを覚悟で法的に淡々と進める。

このような方法となります。

そのため、再契約をしない予定ならば、くれぐれも定期借家契約だからと言って確実に退去して頂けるとは思わず、退去する際、困難になりそうな方は、それを踏まえて入居審査をすることをお勧めします。

2.非弁行為の禁止

まず、賃借人を追い出す場合には、弁護士法の非弁行為をしないようにしましょう。

第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止) 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。

もし、あなたが不動産会社の方で、貸主等から追い出しを頼まれた場合には、貸主と借主の伝言役以上のことはしないようします。

伝言は問題ありません。例えば交渉内容を伝言役が勝手に変えたり、独自の判断で纏めたりしてはいけません。交渉の主体が貸主と借主になっていれば大丈夫です。

ちなみに無償の場合は弁護士法に引っかからないという考え方はありますが、その際には借主の退去後も利益がないか考慮が必要であることは記載しておきます。

3.追い出すために借主を説得する。

貸主は目的があって普通賃貸借契約ではなく定期借家契約で締結をしたと思います。

その定期借家契約の目的が達成できないことは問題だからです。しかし、退去されなくてもいいかと許せるなら、そのまま追い出さないのも一つの答えです。

ただ、必ず退去して頂かなければならない場合には、借主の説得を続けるしかありません。

契約書に明渡遅延損害金が指定されている場合には、それを借主に伝えても良いでしょう。

また、それを記載していない場合であっても不法占拠していることが原因で貸主が損害を受けている旨を伝え、被害額を請求(連帯保証人にも)しても問題はないと思います。

参考になるかは分かりませんが、私がこういう話で関わった場合には、追い出すことは忘れて、とりあえず借主が「どうして引越しをしない」のか理解をすることから始めます。

借主の言葉を細かく分析して何が一番の解決方法になるのか考える。そこで導き出された答えで貸主と借主が納得できるなるなら、どんな結果でも結局それが一番良いと考えます。

それができない場合には、争いとなります。

4.借主の主張が納得できないので法的に淡々と進める

追い出しの最終手段は裁判所に明け渡し請求をすることです。 適切に法律通り定期借家契約を締結している場合には、正当事由は不要なので裁判で負けることはありません。

本件の場合、判決を貰うのは難しくないと思いますが、それでも時間と費用は掛かります。

また、判決後は執行手続きが必要となります。

その際、借主が物件内にある荷物をすべて撤去して退去されたのであれば問題ありません。しかし、夜逃げ同然でいなくなった場合、物件に残された荷物は貸主の費用で一定期間保管をしなければならないことがあります。

当然、無駄にかかった費用は損害賠償として請求しても良いですが、それを支払えるのであれば、そもそも居座っていないことが殆どだと思います。

そのため、もし法的に淡々と進める場合であっても、途中で借主が和解交渉を求めてきた場合、私は可能な限り応じるようにしています。

但し、その際、本件を弁護士等に相談している場合には、交渉内容を事前に指導して貰うことをお勧めします。

借主と約束したことが原因で定期借家契約が普通賃貸借契約に変わったと判断されて正当事由がなくなり、追い出しができなくなる場合があります。

まとめ

復唱となりますが、定期借家契約は一定期間で必ず切れる賃貸借契約ですが「明け渡し」について確約がされている訳ではありません。

そのため、再契約をしない予定ならば、くれぐれも定期借家契約だから確実に退去して頂けるとは思わず、退去する際に困難になりそうな方は、それを踏まえて入居審査をすることをお勧めします。

最後までご覧頂きありがとうございました。こちらのサイトが何かの参考となれば幸いです。

サイトのまとめ
1.定期借家契約とは
2.非弁行為の禁止。
3.追い出すために借主を説得する。
4.借主の主張が納得できないので法的に淡々と進める。

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