津波災害警戒区域の指定がない場合にはハザードマップを見よう
目次
1.不動産業者が負っている説明義務の内容
2.不動産取引をする場所のハザードマップは確認する
3.平成23年に制定された「津波災害警戒区域」の指定状況
当たり前ですが不動産の契約をする場合、購入者等は取引予定の土地・建物が安全なのか知りたいと思うはずです。
不動産用語という難しい言葉を知りたいのではなく、ただ、そこが安全なのか知りたいだけだと思っています。
不動産業者には取引物件について契約をする前に、重要事項を説明する義務があります。
その説明の中で、このサイトでは、「津波災害警戒区域」について私が疑問に思っていることを記載したいと思います。
なお、結論を先に申し上げておきますと不動産業者は説明の義務を果たした場合でも、購入者にとっては説明不足の場合がありますので、取引をする場所のハザードマップは購入者自身で確認をすることをお勧めします。
特に住宅ローンを組んで取引をする場合には、半生を掛けて返済をされると思います。 その場合、大金を使って後悔を買うことがないように、できる限り細心の注意をするべきと考えます。
1.不動産業者が負っている説明義務の内容
日常生活で「津波防災地域づくりに関する法律」に触れる機会はないと思います。
これは平成23年に制定された法律です。下記に法律の内容を記載しますが、内容としては津波の被害がありそうな地域を 「津波災害警戒区域」 として指定して、その地域では津波による災害に気をつけるということです。
津波防災地域づくりに関する法律
津波による災害から国民の生命、身体及び財産の保護を図るため、国土交通大臣による基本指針の策定、市町村による推進計画の作成、推進計画区域における特別の措置及び一団地の津波防災拠点市街地形成施設に関する都市計画に関する事項について定めるとともに、津波防護施設の管理、津波災害警戒区域における警戒避難体制の整備並びに津波災害特別警戒区域における一定の開発行為及び建築物の建築等の制限に関する措置等について定め、もって公共の福祉の確保及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする。
この法律に基づいて「津波災害警戒区域」に指定されている不動産を取引する場合、不動産業者は重要事項として、そのことを購入者等に説明をする義務があります。
ただ、ここで私は疑問に思っていることがあります。
これは当たり前と思われるかも知れませんが、その説明をする義務があるのは津波災害警戒区域として指定がされている場合のみということです。
例えばハザードマップ等で危険があることが予測されているとしても津波災害警戒区域でなければ、それを説明をするのは義務ではないということです。
私は、そのような場所があることを知っています。
下記は千葉市のサイトに書かれている内容です。
千葉市津波ハザードマップ
津波ハザードマップには、津波による浸水のおそれのある区域や津波避難ビルの位置を地図上で明らかにするとともに、津波に関する知識を掲載しています。
(略)
「津波防災地域づくりに関する法律」の規定により、警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域を「津波災害警戒区域」に、警戒区域のうち、開発行為や建築を制限する区域を「津波災害特別警戒区域」として指定することができますが、現在、千葉市内に「津波災害警戒区域」及び「津波災害特別警戒区域」の指定はありません。
つまり千葉市は「津波ハザードマップ」の作成はしましたが、 津波災害警戒区域の指定はしていないということです。
繰り返しになりますが、不動産業者には千葉市がハザードマップで指定した場所を説明する義務はありません。
ただ、不動産業者には義務でない事項だとしても取引で購入する判断として必要なことについては説明をしなければなりません。本件の場合、説明をしなかったことによる損害賠償請求を不動産業者にすることはできるでしょうか?
調べたところ、池田総合法律事務所のホームページでは「一般的には、ハザードマップの説明がなかったというだけでは、契約の解除や損害賠償は難しいのではないか」という見解を掲載してします。
不動産を購入される方にしてみれば、義務はなくても説明しろと思うかもしれませんが、現在はこのような状況です。 義務がないので、そもそも調べない不動産業者は普通にいます。
私的には、契約者が後悔をしないように説明をするべきだと思います。 しかし、調べてないため、説明できないのは当たり前と言われても不思議はないのです。
このようなことも考えられますので、購入する際には自分で調べた方が良いこともあります。
最近ではインターネットでハザードマップの情報は見ることができますので契約前に確認されることをお勧めします。
2.不動産取引をする場所のハザードマップは確認する
繰り返しになりますが、不動産を購入しようとしている方には、契約をする事前に自身でハザードマップを見ることをお勧めします。
ハザードマップでは津波のことだけではなく、各種災害のことを確認することができます。
私的な見解ですが、「標高が低い」ことが原因で「大雨、河川の氾濫、津波等」により被害に合う確率が高い場所について不動産取引をする場合には、よくよく考えられた方が良いとは思います。
また、どうしてもその地域の購入等をされる場合には、「水害に合うことを想定した建物の建て方(基礎を高くする等)をする」や「床上浸水を想定した火災保険の契約をする等」、事前に対策をされることをお勧めします。
3.平成23年に制定された「津波災害警戒区域」の指定状況
私的に、海のある「神奈川県」「千葉県」で津波災害警戒区域が未指定であることを疑問に思っています。
理由としては、二つの県ともに津波の警戒をしているように思えるからです。
神奈川県 津波災害警戒区域等の指定状況
平成31年4月1日現在、神奈川県においては、「津波防災地域づくりに関する法律」に基づく「津波災害(特別)警戒区域(法第53条、第72条)」の指定はありません。
神奈川県 津波浸水想定について
「津波浸水想定」を踏まえ、県と市町が連携して、津波による災害から住民等の生命を守るための対策に、取り組んでまいります。
神奈川県は、このように津波災害(特別)警戒区域の指定をしておりませんが、津波による災害から住民等を守る対策に取り組んでいるようです。
千葉県 津波防災地域づくりに関する法律
「津波災害(特別)警戒区域」については、「津波防災地域づくりに関する法律」に基づき区域指定するものであり、現在千葉県においては未指定です。
千葉県 津波浸水予測図
千葉県に大きな津波被害をもたらした元禄地震(1703年)と延宝地震(1677年)のシミュレーションをもとに、津波浸水予測図を平成18年に作成しています。
千葉県でも津波災害(特別)警戒区域は未指定でありながら津波のシミュレーションをしています。
また、現時点では東京都も津波災害(特別)警戒区域は未指定の状況です。
しかし、実際に災害時には東京に津波が来ています。
中央区における津波および液状化について
平成23年3月11日に発生した東日本大震災による中央区晴海の最大津波高は、同日19時15分の1.5メートルでした。
東京都中央区のホームページでは東日本大震災の際、津波を受けたことを公開しています。
もちろん、現在は指定されていない場所でも(2019/6/5現在)、将来的は多くの場所で指定される可能性があります。
しかし、現時点では、津波災害警戒区域に指定されていないことを理由にして津波がこない安全な場所と考えるのは問題があるように思います。
その土地で津波の災害がありそうか確認をする場合には、津波災害警戒区域に指定されていなくても、特に海沿いの場合にはハザードマップで確認をすることをお勧めいたします。
もちろん不動産業者には、ハザードマップの内容を説明している不動産業者がいることは知っています。しかし、この部分については自己防衛のために購入者等がインターネットで検索をする程度のことはするべきという内容となります。
最後までご覧下さりありがとうございました。このサイトが何かの参考となれば幸いです。
サイトのまとめ
1.不動産業者が負っている説明義務の内容
2.不動産取引をする場所のハザードマップは確認する
3.平成23年に制定された「津波災害警戒区域」の指定状況