法定更新をしたので更新料は支払いません
目次
1.更新料とは
2.法定更新および交渉内容
3.法定更新した場合の更新料請求による裁判
4.更新料の減額交渉はできるのか?
私は不動産業者として、大家さんに頼まれて住居等の賃貸借契約の更新手続きをすることがあります。
その際、借主から様々な交渉を頂くことがあります。
基本的には一つ一つの交渉に対して丁寧に対応をしているつもりですが、交渉が悪化した結果、裁判をしたことがあります。
このサイトでは、そうなった私の経験の一つを記載したいと思います。
今回は、よくある交渉の内容として借主から「更新料を支払うつもりはない」とご主張を頂いて話し合った結果、裁判となったケースの記載をします。
先に結果を申しますと貸主側(つまり大家さん側)の主張が認められ、結局、借主は更新料を払うことになった案件となります。
1.更新料とは
更新手続きの際、借主は「更新料」を負担することがあります。
更新料は慣習であるため必ず掛かる費用ではありませんが、契約書で約束した場合には義務となります。
ただ、更新料の負担は大きいと考える借主は多く、免除の交渉をされる方は多いです。
このような場合、基本的には話し合いで解決されることが殆どであり、争い事になることは少ないです。
ただ、それでも私には揉めた結果、裁判となった経験したことがあります。
理由としては、これは私の勘違いかも知れませんが、そもそも借主が揉めることを覚悟して交渉をしていると感じていました。
喧嘩上等という態度で借主が交渉しており、貸主がそれに応じたため、行くところまで行ったのだろうと今でも思っています。
私が経験したその際の貸主のご主張は「法定更新したのに合意更新をする理由を教えてください」 という内容でした。
2.法定更新および交渉内容
住居の賃貸借契約で、借主が契約期間満了後も退去をせず、住み続けた場合には法廷更新と呼ばれる状態となります。
これは賃貸物件の入居者を保護するためです。
例えば、悪い大家さんがいたとして、更新時に家賃を不当に値上げしたり、満期時に強引に追い出すことができた場合、弱い立場の借主は被害に合う可能性があります。
これを防ぐために法定更新があります。
法定更新とは更新手続きをしないで賃貸借契約の満期後も住み続けた場合、従前の契約と同一の条件で契約を更新したとみなされることをいいます。
法定更新は強行規定ため、契約書にどのような条文や特約があっても有効です。
そのため、契約上は更新の手続きをしなくてはならないのですが、法律上は更新の手続きしなくても住み続けることができます。
これを理由にして法廷更新をすれば更新手続きは必要がないため、更新時の更新料は払う必要はないと思い込まれている方はいます。
実際、法定更新を「更新料を支払わないための方法」として インターネット等で広めている方はおり、そのサイトの情報そのままの交渉を頂くことは、非常によくあります。
例えば、賃貸借契約の数ヶ月前から電話手紙等で連絡をしていても音信不通が続き、満期後に「住宅賃貸借契約が期限の定めがない契約になったので合意更新をして更新料を支払う理由が分かりません」とご主張される借主は、まれにいます。
どう考えても契約満期まで音信不通で逃げていたようには思いますが、この場合でも一応、契約内容は説明をします。但し、大抵は理解する気がないというか話を聞く気がない方が多いようには思います。
住宅賃貸借契約書で更新料の約束をしていても、その通りに履行するのは不当だと思われているようなご主張を頂いた経験となります。
3.法定更新した場合の更新料請求による裁判
このような交渉を頂いた結果、仕方なく裁判をしたことがあります。
更新料は数万~十数万円であることが多いため、裁判をしても赤字になることもあります。
それでも過去に裁判を行った理由は下記のようになります。
- 借主の交渉内容があおり過ぎであったことから、貸主がムカついたため(貸主も人間なので怒ることがあります)
- 法定更新を主張すると更新料がなくなると思い込まれるのも面倒だと判断したため(言いふらしそうな借主だと思ったため)
- 普通に勝てる内容であるため等…
私は、この内容の裁判等で負けたことはありません。しかし、毎回、借主は本気で更新料を支払い義務はないと思い込んでいるように感じます。
念のため、申しておきますが法定更新は合意更新をしないことを目的とした強行規定ではないため、この場合の借主のご主張は、ただの権利の乱用です。
しかし、法廷までいらっしゃる借主は、そう思っていないように感じます。
実際、私は法廷で「期限の定めがない契約となったため、更新をする気はありません」と借主から伺ったことがあります。 (※最後には和解しましたが)
当たり前ですが、賃貸借契約を締結した場合、そこに書かれている内容は有効です。そのため、契約書に更新料のことが書かれている場合には、それに従って支払わなければなりません。
ただし、それを理解した上で、更新契約の際に交渉されるのは良いことだと思います。更新契約の場合にも納得できる内容で契約をするべきだと思います。しかし、交渉内容としては、この点を踏まえて条件の提示をされることをお勧め致します。
※ 平成23年の最高裁の判決が出る前は、テレビ等のマスメディアで更新料は払わなくてもいいという内容が報道されたため、本当に、そう思い込まれていた方からたくさんの交渉を頂いたことがあります。現在は、その当時程ではありませんが、それでも更新料は不当な請求であると本気で思い込んでいる方から交渉を頂くことはあります。
4.更新料の減額交渉はできるのか?
更新料の交渉をした結果、貸主の意向により減額や免除がされることはあります。
しかし、それは例えるなら「個人事業主の八百屋で値下げ交渉する」ようなものであり、八百屋さんが値下げを認めないときは野菜の値段が下がらないように、「貸主が認めないなら更新料も減額されない」ものとなります。※すべては貸主次第
貸主が減額等をする特別な理由がない限り、更新料の交渉は殆ど駄目元となります。必ず更新料を「減額」「免除」できる交渉方法は存在しないためです。そのため、少しでも減額された場合には運が良かったと思って頂ければと思います。
たまに凄く欲のない貸主がいて、減額や免除しまくるケースもありますが、その場合には貸主へ感謝されることをお勧めします。
なお、最近は家賃の保証会社が更新料を保証するケースがありますので交渉される場合には慎重に対応ください。場合によって家賃保証会社が更新料を代弁済してしまうことがあります。
こちらのサイトの内容が何かの参考になれば幸いです。最後までご覧頂きありがとうございました。
このサイトのまとめ
1.更新料とは
2.法定更新および交渉内容
3.法定更新した場合の更新料請求による裁判
4.更新料の減額交渉はできるのか?
はじめまして。コメント失礼します。
借り主さんとの更新間際のトラブルで、法定更新になってしまい調べている内に
こちらのサイトにたどり着きました。
大家さんが裁判で勝ったと言うことで、少し希望が持てました。
法定更新をねらって更新間際にトラブルを起こす借り主さんが結構いるのではないかと
思います。裁判も大変ですが、悪質な借り主には毅然と挑みたいので参考になりました。
コメントありがとうございます。
契約書に合意更新のことが書いてある場合「賃借人は通常であれば契約が合意更新されることを知っている」ことが前提となりますので、賃借人が正当な理由なく手続きをしないのであれば、それが争点となります。
賃貸人が社会通念から考えて暴利を請求していないのであれば、堂々と合意更新を求めて問題ないと思いますが、労力の割に見返りがないのが本件となります。