不動産取引の損害で営業保証金等の還付を請求する

このサイトでは不動産業者が必ず供託をしている営業保証金等の還付について記載をします。

端的にまとめますので、是非最後までお読み頂ければと思います。

目次
1.不動産業者の営業保証金とは
2.不動産協会の弁済業務保証金とは

1.不動産業者の営業保証金とは

不動産業者は、供託所に【本社は1,000万円、支店一店につき500万円】の供託をしています。

これは昭和32年の宅地建物取引業法改正より開始しました。

その理由は次のようなものです。

弁済業務保証金と違約金債権
55頁引用
【不動産取引に関する事故や紛争はかなりの件数にのぼり】
58頁引用
【これらの事故や紛争を防止し、業者による不動産取引の社会的安全性を確保するため】

一例ですが、不動産業者がいい加減な契約をして購入者に迷惑をかけても営業保証金で還付をすることにより社会的安全性を確保することができるとイメージすると分かり易いと思います。

昭和32年当時、営業保証金は10万円からスタートしました。それから幾度かの増額があり、昭和63年には1,000万円となりました。

当たり前ですが、営業保証金で還付を受けることができる損害は【不動産取引で発生したもの】のみです。

不動産は「建物の修繕やリフォームのミス」「ホームインスペクションの発見ミス」「高額な退室立会等の請求退室立会」「更新料の請求」「入居中の騒音問題」等の様々な問題が考えられますが、これらは不動産取引ではありません。

不動産取引とは「不動産の売買若しくは賃貸の売買、代理、媒介のどれかの契約」のため、これらで発生していることが重要です。

例としては次のようなものとなります。

【土地の範囲について誤った説明をした説明義務違反が認められ、同義務違反により、買主は利用可能な土地面積が減少したこと等による損害を被った】
引用元 土地の範囲の説明義務違反に基づく損害賠償請求債権について、宅地建物取引業保証協会に認証を命じた事例

一例ですが重要事項説明でミスがあったため、損害があったので、その分の賠償を請求することができます。

当然ですが「損害賠償は損害がないと請求できません。

間違いがあっても損害がなければ賠償の請求はできない可能性があります。

これも一例ですが、建物の構造が誤記がある契約をした場合を考えます。「鉄骨」ですが「木造」と誤記があった場合、間違いをしないことが好ましいですが、これで「どのような損害があった」か考えます。

最初から鉄骨と知っているにも関わらず木造の書面で契約をした場合には、間違えていても知っているので損害がないと考えられるかもしれません。また、構造が良くなっているので損害がないと考えられるかもしれません。

間違えたことではなく「この間違いで損害が発生しているか」を考えなければなりません。

損害があるため、賠償が必要となります。

また、当然ながら損害を受けた証拠が必要となります。

考えられる証拠は、不動産取引で賠償が発生していることが分かる書面等となります。

弁済業務保証金と違約金債権
引用58頁
【買主は、民事訴訟を提起し勝訴判決に基づき供託所から営業保証金全額の還付を受けることができるにも関わらず】

この例では、民事裁判の判決となっていますが、賠償について取り交わした書面でも良いと思われます。

この書面を取り交わせる程、話がまとまっている場合には、不動産業者が直接賠償をするように思えるため、営業保証金から還付を求める必要がない可能性があります。

通常の状況ではありませんので、一概に言ってはいけない可能性はありますが、「不動産取引で損害があり、債権が確定しているにも関わらず不動産業者が対応しない場合には、営業保証金による還付を求める」という順序になるように思います。

尚、営業保証金は供託所に預けられています。

これは不動産取引の際、交付されている重要事項説明書には必ず記載されています。

営業保証金の請求先は不動産業者ではなく供託所である点も注意となります。

2.不動産協会の弁済業務保証金とは

営業保証金の供託額は1,000万円です。

高額だと思いますが、不動産協会で弁済業務保証金分担金を60万円支払えば、不動産業者は営業保証金を供託する必要はなくなります。

これはフォーサイトで詳しく書かれていましたので、気になる方はリンク先をご覧頂ければと存じます。

1,000万円の負担が60万円で済むため、弁済業務保証金分担金で代用する不動産業者は多いです。

「営業保証金」と「弁済業務保証金」は不動産業者が納めている金額は異なりますが、不動産取引で損害が発生した場合、同額で対応されます。

このことは最高裁の判決が出ています。

弁済業務保証金と違約金債権
引用59頁
【法は、営業保証金及び弁済業務保証金による各弁済の対象について、いずれも『その取引により生じた債権』と規定しており、他にその内容や範囲を規制することを容認する規定は存しない。したがって、弁済業務保証金による弁済も、その対象債権は同一のものと解すべきである。】

そのため、営業保証金と弁済業務保証金は、同様のように思えますが、私は次のような決定的な違いがあると考えています。

それは、弁済業務保証金で弁済する場合には不動産協会が窓口となっていることです。

ここのサイトをご覧になって頂くと判例を確認することができますが、不動産協会が窓口になっている案件で、それなりに還付の請求が却下されているように思います。

判例は読み込めばマトモな結果のものが多いのように感じますが、弁済業務保証金の還付を請求する場合には、不動産協会が対応することには注意が必要のように思います。

尚、営業保証金と弁済業務保証金の還付手続は、こちらもフォーサイトで詳しくまとめられていましたので、再度リンクさせて頂きます。

最後までご覧頂きありがとうございました。このサイトが何かの参考となれば幸いです。

サイトのまとめ
1.不動産業者の営業保証金とは
2.不動産協会の弁済業務保証金とは

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